うさフェスタ2023から、第4部の講習会の内容をご紹介します。
講師はシンシア動物病院の成毛先生です。
ここでは、EZ(エンセファリトゾーン)関係のお話のみ抜粋してご紹介します。
斜頸とは、耳の奥、前庭に障害が起きたときに起こる症状です。
眼振:
縦揺れ(上下に揺れる)、横揺れ(左右に揺れる)、回転(グルグル回る)の3種類。
縦揺れの眼振は中枢性の前庭障害でしか起きない。
旋回運動(グルグル回る):
中枢性の旋回運動は同じ方向にしか動けないので、進行方向に壁を作るとそこでぶつかって動けなくなる。
(興奮して回っている子は、逆方向に回り出す)
特発性:中枢性でも末梢性でもない、原因不明。
EZは、まだよく分かっていない病気。
従来、原虫に分類されてきたが、DNA解析によりカビ(真菌)ではないかということに。
まだハッキリとはしていない。
偏性細胞内寄生真菌である。
ウサギの日和見感染症
症状のない子たちを調べたときの抗体を調べたときの率。
日本では57.9%と、やや高い。
持っているか・いないかという話とは別で、抗体価というのは、この病気に接触したことがあるかどうかということ。
接触する機会の多い病気ということ。
感染経路は2とおり。
①糞尿を介しての感染(同居個体との水平感染)
②母ウサギからの胎盤を介しての感染(垂直感染)
胎盤を介して感染した場合の症状の1つが先天性の白内障。
白内障は、水平感染では起きない。
臨床症状は様々で、感染した臓器により、様々な傷害が引き起こされる
厄介なのは、環境中で4~6週間生存すること。
糞尿など、部屋の清掃が大事。
斜頸の子が来たときに行う検査。
CTとMRIは持っている病院でしかできない。
今回は、赤文字の検査について説明。
画像中央のグリグリした部分が肉芽腫、これがあれば、EZだったということになる。
生前は暫定診断:血液検査・外注検査を行う。
血液検査;EZの場合、腎臓など他の臓器への感染があるかもしれないので、その確認。
外注検査;EZ IgM抗体とIgG抗体を調べる。SAAは炎症がある場合に跳ね上がる。
IgM抗体:感染して最初に作られる抗体
IgG抗体:後から作られる抗体
斜頸が起きるのは、感染してすぐではない。
感染して、炎症が起こり、そのダメージで斜頸が起こる。
IgGだけ上がったら、昔、感染したというだけかもしれない。
(結局、よく分からない)
この検査で確実に言えることは、斜頸が起きたとき、IgM抗体とIgG抗体が両方低ければEZではないということ。
論文でも、抗体価と臨床症状の重症度や脳内感染の有無との間に相関関係はないと報告されている。
中枢性の前庭障害だった場合、確定診断はできない。
これをどう考えるか
先生の個人的見解:
完治することを目標とするのではなく、日常生活を送れるようになることをゴールにするのがよい。
なぜカビにフェンベンダゾール(駆虫薬)が効くのか、よく分かっていない。
治療の目的は、EZの感染・増殖の抑制と肉芽腫性の炎症を抑えることの2つ。
EZは感染すると細胞の中に入って、
増殖し、細胞を壊して次の細胞へ移る。
細胞が壊れることによって、肉芽腫性の炎症が起こる。
なので、治療はEZの増殖の抑制と肉芽腫性の炎症を抑えることの2つになる。
ただ、薬が効くのは、細胞外のブルーのエリアのみ。
細胞内には効かない。
投薬期間が28日間、というのは論文での投薬期間が4週間だったというだけの話。
そのため、「治ったけど、またなった」ということが起こる。
脳幹にはバリアがあって、薬が到達しないことがある。
到達して、かつ強く抑える薬がステロイド。
ステロイドについては、論文では賛否両論で、よく分かっていない。
使わない方が良いのではとする論文もある。
というのも、ステロイドは免疫抑制剤、免疫を抑制することで炎症を抑える薬なので、免疫を抑える副作用に対しどれほどの効果があるのか?というはなし。
しかし、先生はステロイドを使う方針。
なぜなら、炎症が自然になくなるとは思えないので。
4週間を超えない範囲で使っている。
(この辺は先生によって見解が違うと思われるのでご注意ください)
抗菌薬:感染症予防のため
制吐剤:ステロイドを使うため
抗眩暈薬:眼振が起こるため
鎮静薬:ローリングで日常生活が送れない場合(使ったことはない)
食べられないときは、強制給餌
ここからは、ウチの子(ダッチ)たちに対する考察です。
現在、里親募集中のくりちゃんには、先天性の白内障があります。
健診の時に「EZを持っている」と言われています。
たまたまこの所見があるのはくりちゃんだけですが、実験のウサギさんって、同一コロニー内での繁殖を繰り返しているから、他の子たちも皆、EZありと思った方が良さそう。
経験上も、若い頃は何もなかった子たちも、ほぼ全員、高齢になったときに何らか神経症状が出てEZの治療をしています。
ですが、亡くなった子はすべて病理組織学検査をしているものの、EZを捉えたことはまだありません。
EZが直接の死因ではないので、そうなのかもしれませんけど。
ただ言えるのは、EZはさほど恐れる必要はなく、発症したときに速やかに治療することで改善するということ。
EZが世に知られるようになったときは、劇症型が多く非常にショッキングでしたが、今や実験のウサギさんですら、すでにEZに折り合いを付けていることに改めて驚きを感じます。
現在、里親募集中の女の子たちは、健診でいくつか所見が出て縁遠くなってしまった感もあるのですが、恐れることはないとお伝えしたいのです。
逆に分かっている情報が多いことで、初動が早くできるというメリットもあるかと思います。
すべてのうさぎさんに言えることは、「ちょっとヘン」と思ったら、すぐ病院へ、ということですね。
目つきがおかしい、首が流れる、ちょっとの変化に気付いてあげることが大事なんだと思います。
EZについては、未だ分からないことだらけだそうですが、うさ飼いとしては、是非とも解明してほしいと思います。
講師はシンシア動物病院の成毛先生です。
ここでは、EZ(エンセファリトゾーン)関係のお話のみ抜粋してご紹介します。
斜頸とは、耳の奥、前庭に障害が起きたときに起こる症状です。
眼振:
縦揺れ(上下に揺れる)、横揺れ(左右に揺れる)、回転(グルグル回る)の3種類。
縦揺れの眼振は中枢性の前庭障害でしか起きない。
旋回運動(グルグル回る):
中枢性の旋回運動は同じ方向にしか動けないので、進行方向に壁を作るとそこでぶつかって動けなくなる。
(興奮して回っている子は、逆方向に回り出す)
特発性:中枢性でも末梢性でもない、原因不明。
EZは、まだよく分かっていない病気。
従来、原虫に分類されてきたが、DNA解析によりカビ(真菌)ではないかということに。
まだハッキリとはしていない。
偏性細胞内寄生真菌である。
ウサギの日和見感染症
症状のない子たちを調べたときの抗体を調べたときの率。
日本では57.9%と、やや高い。
持っているか・いないかという話とは別で、抗体価というのは、この病気に接触したことがあるかどうかということ。
接触する機会の多い病気ということ。
感染経路は2とおり。
①糞尿を介しての感染(同居個体との水平感染)
②母ウサギからの胎盤を介しての感染(垂直感染)
胎盤を介して感染した場合の症状の1つが先天性の白内障。
白内障は、水平感染では起きない。
臨床症状は様々で、感染した臓器により、様々な傷害が引き起こされる
厄介なのは、環境中で4~6週間生存すること。
糞尿など、部屋の清掃が大事。
斜頸の子が来たときに行う検査。
CTとMRIは持っている病院でしかできない。
今回は、赤文字の検査について説明。
画像中央のグリグリした部分が肉芽腫、これがあれば、EZだったということになる。
生前は暫定診断:血液検査・外注検査を行う。
血液検査;EZの場合、腎臓など他の臓器への感染があるかもしれないので、その確認。
外注検査;EZ IgM抗体とIgG抗体を調べる。SAAは炎症がある場合に跳ね上がる。
IgM抗体:感染して最初に作られる抗体
IgG抗体:後から作られる抗体
斜頸が起きるのは、感染してすぐではない。
感染して、炎症が起こり、そのダメージで斜頸が起こる。
IgGだけ上がったら、昔、感染したというだけかもしれない。
(結局、よく分からない)
この検査で確実に言えることは、斜頸が起きたとき、IgM抗体とIgG抗体が両方低ければEZではないということ。
論文でも、抗体価と臨床症状の重症度や脳内感染の有無との間に相関関係はないと報告されている。
中枢性の前庭障害だった場合、確定診断はできない。
これをどう考えるか
先生の個人的見解:
完治することを目標とするのではなく、日常生活を送れるようになることをゴールにするのがよい。
なぜカビにフェンベンダゾール(駆虫薬)が効くのか、よく分かっていない。
治療の目的は、EZの感染・増殖の抑制と肉芽腫性の炎症を抑えることの2つ。
EZは感染すると細胞の中に入って、
増殖し、細胞を壊して次の細胞へ移る。
細胞が壊れることによって、肉芽腫性の炎症が起こる。
なので、治療はEZの増殖の抑制と肉芽腫性の炎症を抑えることの2つになる。
ただ、薬が効くのは、細胞外のブルーのエリアのみ。
細胞内には効かない。
投薬期間が28日間、というのは論文での投薬期間が4週間だったというだけの話。
そのため、「治ったけど、またなった」ということが起こる。
脳幹にはバリアがあって、薬が到達しないことがある。
到達して、かつ強く抑える薬がステロイド。
ステロイドについては、論文では賛否両論で、よく分かっていない。
使わない方が良いのではとする論文もある。
というのも、ステロイドは免疫抑制剤、免疫を抑制することで炎症を抑える薬なので、免疫を抑える副作用に対しどれほどの効果があるのか?というはなし。
しかし、先生はステロイドを使う方針。
なぜなら、炎症が自然になくなるとは思えないので。
4週間を超えない範囲で使っている。
(この辺は先生によって見解が違うと思われるのでご注意ください)
抗菌薬:感染症予防のため
制吐剤:ステロイドを使うため
抗眩暈薬:眼振が起こるため
鎮静薬:ローリングで日常生活が送れない場合(使ったことはない)
食べられないときは、強制給餌
ここからは、ウチの子(ダッチ)たちに対する考察です。
現在、里親募集中のくりちゃんには、先天性の白内障があります。
健診の時に「EZを持っている」と言われています。
たまたまこの所見があるのはくりちゃんだけですが、実験のウサギさんって、同一コロニー内での繁殖を繰り返しているから、他の子たちも皆、EZありと思った方が良さそう。
経験上も、若い頃は何もなかった子たちも、ほぼ全員、高齢になったときに何らか神経症状が出てEZの治療をしています。
ですが、亡くなった子はすべて病理組織学検査をしているものの、EZを捉えたことはまだありません。
EZが直接の死因ではないので、そうなのかもしれませんけど。
ただ言えるのは、EZはさほど恐れる必要はなく、発症したときに速やかに治療することで改善するということ。
EZが世に知られるようになったときは、劇症型が多く非常にショッキングでしたが、今や実験のウサギさんですら、すでにEZに折り合いを付けていることに改めて驚きを感じます。
現在、里親募集中の女の子たちは、健診でいくつか所見が出て縁遠くなってしまった感もあるのですが、恐れることはないとお伝えしたいのです。
逆に分かっている情報が多いことで、初動が早くできるというメリットもあるかと思います。
すべてのうさぎさんに言えることは、「ちょっとヘン」と思ったら、すぐ病院へ、ということですね。
目つきがおかしい、首が流れる、ちょっとの変化に気付いてあげることが大事なんだと思います。
EZについては、未だ分からないことだらけだそうですが、うさ飼いとしては、是非とも解明してほしいと思います。